なぜインプラントなのだろう?良く噛める、味が分かるという幸せは、歯を失って味覚を失ったことのある人でなければ分からない辛いこと

なぜインプラントなのだろう?

インプラントでなければならないのでしょう?

患者さんは、お金がたくさんかかる治療を望むのだろうか?
保険で全部終われば、大助かりなのでは・・・それが庶民(私)の考えでは?
と思っていました。

「インプラントをしようか、どうしようか。」

そんなお悩みを持っている方たちと、電話でカウンセリングをしますと、
その悩みは、当事者だから語れる、大変重たい言葉ばかりでした
(実は長年、インプラント相談会の受付窓口の担当をしていた経験がございます)。

ある時のお電話では、
総義歯の方で、1本も歯が無い方からのご相談でした。
インプラントを入れること…よりも、
インプラントの手術をした後に、食事ができるのか、
どれくらい不自由の時間を過ごさなくてはならないのか。
そのことが、酷く悩みであったことを知らせました。

「食事の心配」、それも、仮に不自由を感じたとしても
わずかのその期間をどう安心して迎えられるかが、
この方のインプラントに関する大きな関心時でした。
総入れ歯(総義歯)の方は、入れ歯でお口の中の一部を
覆い被してしまっています。口は全体で味覚を感じるため、

「食べるを感じる機能」が、入れ歯によって味覚を奪ってしまうという
悲しい現実を受け入れ、入れ歯とお付き合いすることになります。
(テレビコマーシャルでは、美味しそうに食べ物を頬張る姿が目に焼き付いている方も
多いのではないでしょうか。入れ歯を支えている骨がしっかりしている人ばかりでは
ありません。入れ歯で咬めなくて、入れ歯を外していたら、残っている歯が動いて、
入れ歯が使えなくなったという人も少なくないのでは?(私の母がそうでした))

<ちょっと脱線しました、戻ります>

このお電話の方が、どれほど食事を楽しみにされているか、
食べることを大切にしているか。
自分の歯があったときと同じように、味覚を感じ、食べたい!
しかし、入れ歯から、インプラントに切り替える期間、
食べられなくなったり、食事を楽しめなくなるのは勘弁して欲しい。
そんな願いでした。

人間にとって、食べることは、即ち、生きることです。
食べる喜びを失った方にとって、インプラントは、
どんなに価値のある治療であるか・・・

ただただ、安くあがれば、あわよくば保険の範囲内で終わればと考えるのは、
味覚を大幅に失った経験がないためかもしれません。
インプラントに希望をもって、期待をもって診療される方、
また、食べる喜びを命の尽き果てる最期まで、感じて生きれることが
お一人でもできるように・・・
13年以上にわたり、歯科医院とお付き合いをして得られた
インプラントのことを綴って参りたいと思います。